新建設コンサルタント株式会社

Construction column

建設コラム

発注者支援業務とは?
初心者でもわかりやすい徹底解説

 

本記事では、「発注者支援業務」とは?について建設業界に関わったことのない初心者でもわかるように単語の意味の解説を含めて徹底的に解説しています。

「発注者」とは、どのような立場で業務をする人なのか、更には、なぜこのような業務が必要なのかについても詳しく説明しています。

  

建設業界

  

1.発注者支援業務とは?

「発注者支援業務」を非常に簡単に説明すると、読んで字のごとく、「発注者」を「支援」する「業務」をまとめて「発注者支援業務」と言います。

もう少し具体的に説明すると、主に国土交通省(地方整備局を含む)が発注する事業(公共工事・公物管理・事業監理業務等)において、発注者として国土交通省の職員が本来行う業務を代行して実施する補助業務を指します。

  

  

2.発注者とは

さて、それでは「発注者」とはどのような立場の人でしょうか。

公共事業に関わったことのない人に向けて説明すると、公共工事を発注する人を「発注者」と呼ぶため、発注者として国土交通省の職員が本来行う業務を代行して実施する補助業務を指します。

  

お役所

  

  

3.発注元はどのような組織が多い?

発注者支援業務の具体的な業務内容は後述しますが、基本的に土木職の仕事が多いことが特徴です。

発注者として最も多いのは国土交通省、農林水産省、防衛省などが該当します。

その他には、NEXCO東日本・中日本・西日本、UR都市機構、都道府県の自治体、特に政令市が多い傾向にあります。

  

発注者

  

  

4.公共事業とは

次に公共事業について解説します。

公共事業とは、社会公共の利益を目的とする事業であり、土木業でいうと、道路・トンネル・橋梁・ダム建設が該当します。

建築分野では、病院・学校・商業施設などが該当します。

その他にも電気・水道・ガスなどのいわゆるインフラと呼ばれるものを提供する工事を公共事業と言います。

ここまでで、発注者支援業務を説明する上での必要知識は網羅できました。さて、次はいよいよ発注者支援業務の仕事内容を解説します。

  

公共事業

  

  

5.発注者支援業務の仕事内容

いよいよ、具体的な発注者支援業務の仕事内容について説明していきます。

発注者支援業務とは、発注機関の工事発注にともない発生する工事積算や工事検査などの業務を、発注機関の職員に代わって行うことを上述で解説しました。

その仕事内容として該当する業務は以下の通りです。

  

  

表1. 発注者支援業務一覧 

区分 業務名称 
発注者支援業務 等 発注者支援業務 ・積算技術業務 
・工事監督支援業務 
・技術審査業務 
公物管理補助業務 ・河川巡視支援業務 
・河川許認可審査支援業務 
・ダム管理支援業務 
・堰・排水機場等管理支援業務 
・道路許認可審査・適正化指導業務 
用地補償総合技術業務 ・用地補償総合技術業務 
(参考リンク:https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000869189.pdf) 

  

上記表の業務名称における主な業務内容を詳しく説明します。

  

▷発注者支援業務

・工事監督支援業務 

高品質な成果物を納品することを目的に現場施工管理において目的構造物の位置・寸法・材料などの履行確認などの発注者と施工業者の間に立って行う支援業務です。

具体的には、材料試験・検査、出来形検査、品質検査などを経て工事着工から竣工まで所定の品質を担保していることをチェックします。 

  

・資料作成業務(調査設計資料作成業務) 

発注者が事業を進める上で必要となる関係者や関係機関との協議・調整に必要な資料の作成、技術管理上一般的な資料の取りまとめ及び各種資料の作成を行うもの。

具体的には以下のような内容です。

  • 業者に依頼した調査結果資料の取りまとめ
  • 工事の設計図面や数量の取りまとめ
  • 工事施工に関わる関係機関(他の役所など)との協議資料の作成
  • 事業説明会などで使用する資料の作成
  • 業務の入札契約手続きに関する資料作成

  

・積算技術業務 

公共工事における積算資料の作成や積算データの入力を行い、円滑かつ的確に発注工事の予定価格を算出できるように支援することが業務内容です。

具体的には、工事の積算に必要な工事発注用図面、数量総括表、積算資料、積算データの作成等の業務支援を行います。

  

・技術審査業務 

発注者が総合評価落札方式で施工業者を決定する際の総合評価資料の確認や整理を行う業務を指します。

工事入札参加者から提出された競争参加資格確認申請書等の整理を行い、適切に技術評価ができるように業務支援を行います。 

  

  

▷公物管理補助業務 

・河川巡視支援業務 

河川とは、公共用物であって、その保全、利用その他の管理は、洪水・高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び河川環境の整備と保全がされるよう適正に行わなければならない。と定められています。 

そのため、河川を常に良好な状態に保つための1つの手段として河川巡視を実施します。

具体的には、管理する区域(河川区域や河川保全区域)を定期的に巡視することで、その時の状況を把握し、堤防や堰、水門樋門、樋管等の河川管理施設の異常及び不法占用等の状況を正確に報告・記録するとともに、臨機な処置を講ずる等の業務支援を行います。 

  

・河川許認可審査支援業務

河川関係法令等に基づく申請書類の審査、許認可工作物の監督検査、問い合わせ対応、台帳整備、危機管理対応等の支援を行います。

具体的には、河川現況台帳等の補正や整備、苦情などの申し立て等に係る現地立会、境界明示、確定に係る立会、審査等などが含まれます。

   

河川巡視

  

・ダム管理支援業務 

ダムや貯水池、その他関連設備等を管理する上で必要な監視や点検、ゲート操作、気象水象等の観測記録及びダム管理資料整理等の業務等の支援を行います。

具体的には、ゲート操作時の補助及びダム放流時の関係機関への連絡、記録の作成、整理、ダムで観測しているデータ(漏水量・揚圧力・水文・水質データ 等)の観測、整理、記録の作成などが含まれます。

   

・堰・排水機場等管理支援業務 

管理する堰や排水機場及び樋門等の操作支援並びに操作に必要な情報収集や目視点検等の支援を行います。

具体的には、監視カメラ、堰柱、ゲート、管理橋及び橋脚他の施設監視、水位データ及び上下流河道等の環境状況の監視、管理所内電気機械設備等の状態監視などが含まれます。 

  

・道路許認可審査・適正化指導業務 

道路法に基づく各種申請書類の審査・指導、道路の不法使用、不法占有の指導取締り、境界確認申請審査・現地立会い、特殊車両通行の指導取締り等の補助的業務を行うものであり、円滑な行政手続きにより適切な道路利用を推進することを目的としています。

   

・施工体制調査業務 

施工体制調査は、工事現場において、監理技術者の専任制等の把握の徹底を図るほか、現場の適正な施工体制の確保を確認し、適切な工事実施を図ることを目的としています。

  

  

▷用地補償総合技術業務 

損失の補償等を要する権利者に対し、公共用地交渉方針の策定を行ったうえで、公共用地交渉を実施し、損失補償の承諾を得る等の支援を行います。 

・事業促進PPP(官民連携事業)業務

事業の促進を図るためにも官民がパートナーシップを組み、官民双方の技術者が有する多種多様な経験、知見を融合させながら調査・測量・設計業務、施工管理業務など官民連携事業においても各業務段階で発注者支援を行う。

具体的には、設計成果物の照査業務支援や技術的指導・助言などが含まれます。

  

  

6.建設コンサルタントとは何が違うの?

仕事内容を拝見すると建設コンサルタントの業務内容と同じだと感じる人も少なくありません。

実際に発注支援業務は、建設コンサルタント事業の一つです。

ただし、建設コンサルタントの業務と発注支援業務で明確に異なるポイントは、発注者の立場で仕事をしているか否かです。

通常の建設コンサルタントは、提案書を用いて発注者が公示する案件に応募して受注者(応札者)として民間企業の立場で業務に従事します。

一方で発注者支援業務は、発注者の業務を発注者側の立場で代行することが大きく異なるポイントです。

  

建設コンサルタント

  

  

7.発注者支援業務の成り立ち

昭和57~58年頃、「小さな政府」として行政機能は、なるべく人数を減らして少ない人数でコンパクトに仕事をすることを目指している時期がありました。

その上で民間ができることはできるだけ民間に委託し、自由競争を促して経済成長を図る取り組みを促進していました。

一方で、公共事業の事業プロセスは、一般的には下記のフローで実施されます。

  1. 調査・測量
  2. 事業用地の確保
  3. 設計業務
  4. 積算業務
  5. 入札
  6. 施工管理
  7. 検査
  8. 運営・維持管理

  

このように、公共事業とは複数ステップで非常に煩雑な事業であったことから、少ない人数で回そうとした結果、一部を外部委託せざるを得なくなったことが「発注者支援業務」が誕生した背景です。

  

  

  

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