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建設コラム

「建設コンサルタント」への工事発注について徹底解説 

 

建設コンサルタントへの公共工事の発注に関して、昨今の入札方法でよくみられる「総合評価落札方式」とは、参加者同士が競争するように技術提案等を求め、価格以外にも参加者の能力を審査・評価し、その結果を総合的に判断して、優れた評価だった参加者を契約者とする方式です。

本記事では、様々な発注方式の特徴を基礎から丁寧に解説するので、これから建設業に関わる人にとって、入札の違いによる工事の特徴を理解できる重要な内容になっています。 

 

工事発注

 

 

公共事業とは 

まず初めに、公共事業について解説します。

公共事業とは、社会公共の利益を目的とする事業であり、道路・ダム・トンネルなどの土木構造物や、病院・学校などの建築構造物、電気・ガス・水道などのライフラインが該当します。

民間企業が自社の利益目的ではなく、国家や地方公共団体が公共の利益のために経営する事業を指します。 

 

 

公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)導入の背景

平成17年に施行された公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)では、公共工事の品質は、経済性に配慮しつつ価格以外の多様な要素をも考慮し、価格及び品質が総合的に優れた内容の契約がなされることにより、確保されなければならないと規定されています。

これまで、公共工事に係る建設コンサルタント業務における業者選定方式は、主に企画競争(プロポーザル方式)と価格競争方式(最低価格方式)の2種類の発注方式で実施してきました。

一方で、品質確保に関する動向を踏まえ、平成19年度から「総合評価落札方式」の試行開始・本格導入が進められてきたのです。 

 

品確法

 

 

発注方式の概要と選定の考え方 

ここで改めて入札にかかる全体像を整理します。

まず、コンサルタントの入札には、入札(調達)形式と業者選定方式別に分けられ以下の通りに全体像を示すことができます。 

 

 

コンサルタント業務に係る入札(調達)方式 

建設コンサルタント業務の入札(調達)方式には大きく3種類あります。 

  • 一般競争入札 
  • 指名競争入札 
  • 随意契約 

 

また、業者選定方式としては下記の3種類があります。 

  • 企画競争(プロポーザル方式) 
  • 価格競争方式(最低価格方式) 
  • 総合評価落札方式 

 

契約形式入札(調達)方式選定方式
一般競争入札一般競争入札最低価格落札方式
総合評価落札方式
制限(条件)付き一般競争入札最低価格落札方式
総合評価落札方式
指名競争入札指名競争入札最低価格落札方式
総合評価落札方式
参加希望型(公募型)指名競争入札最低価格落札方式
総合評価落札方式
随意契約競争性ない随意契約-
競争性のある随意契約(指名型)見積り合わせ
競争性のある随意契約(公募型)オープンカウンター
企画競争(公募型)プロポーザル方式
コンペ方式
企画競争(指名型)プロポーザル方式
コンペ方式

 

一般競争入札とは 

近年、官公庁入札においては、応札金額によって落札者を決定する「一般競争入札」の割合が増加しています。

一方で、中小企業の中には、価格競争力よりもむしろ、提案力・企画力に強みを持つ企業が少なくありません。

本入札は不特定多数の入札者が参加可能であり、その中で最も有利な条件を出した入札者と契約できる公平性に優れた入札方式です。

 

本方式のメリットは、条件面の競争力があれば、事業者の規模や入札経験にかかわらず落札のチャンスがある一方で、デメリットは落札のために価格を必要以上に下げることで、利益率が悪化してしまうケースもあることです。 

 

指名競争入札とは 

発注者が特定の事業者を指名し、その中から最も有利な条件を提示した応札者と契約する方式です。

従来は、条件が豊富でしたが、公平性が担保しにくい観点から近年では発注数が減少しています。

本方式では、一度「指名」を頂けると、次回以降も同様の案件では指名をしてもらいやすいため発注者との長期的な付き合いが期待できる特徴があります。 

 

本方式のメリットは、入札に参加できる事業者が指名によって限定されるため、一般競争入札などと比較して落札につながる確率が高いことである一方、デメリットは、発注機関からの指名がなければ参加できないことです。 

 

指名競争入札

 

 

随意契約とは 

入札者同士で競争させることなく、発注者が任意に特定の事業者を選んで契約する例外的な契約方式の一つです。

競争入札が適当ではない場合や、緊急的な対応が求められる案件に、随意契約が結ばれる傾向にあり、具体的には災害時をはじめとする緊急事態があります。

その他にも、他社にはない技術や製品をもっている唯一の事業者が該当する場合等です。ただし、特命随意契約は例外的な措置です。

特命随意契約のガイドラインを明確にして、透明性を高めている自治体が多いといえます。特命随意契約の利用では、契約内容が明確になる工夫が重要です。

 

本方式のメリットは、随意契約として発注機関と契約が結ばれた場合、確実に落札となる一方で、デメリットは、入札への参入経験に乏しい事業者の場合、随意契約の企業として選定されることは難しいことです。 

 

随意契約

 

 

企画競争(プロポーザル入札)とは 

不特定多数の企業の中から定められたテーマの企画書・提案書などの提出を求め、最も適した提案をした企業を契約の相手とする方式です。

当該業務の内容が技術的に高度なもの又は専門的な技術が要求される業務であって、提出された技術提案に基づいて仕様を作成する方が優れた成果を期待できる場合は、プロポーザル方式を選定します。

評価項目には、会社の評価、技術者の評価、実施方針の評価、技術提案の評価があります。

 

本選定方法のメリットは、低価格を狙う一般競争入札では予算ギリギリの案件を獲得してしまうケースがある一方で提案内容が評価対象となることから見積額の予算をあえて削る必要性が薄れ、案件獲得後は利益が増える可能性を見込めます。

デメリットは、提案書の作成や評価資料の準備に一定の時間と労力を要するため入札までにコストがかかります。

 

価格競争方式(最低価格方式)とは 

従来から活用されてきた方式で、価格の安い応札者を決める方式です。

前述の記載と重複しますが、予算ギリギリで案件を獲得してしまったときに受注のメリットが小さいこと等が問題視されています。

一方で、参加資格の要件が無いため、だれでも参加できる傾向にあり、利益よりも実績作りを重視する企業におすすめの入札方法です。 

 

総合評価落札方式とは 

最後に、価格と提案の両方を基準に選ぶ方式として「総合評価落札方式」があります。

提案など総合的な能力で会社を絞り込み、最後に価格で決められる方式です。競争入札とプロポーザルの合わせ技といえます。

事前に仕様を確定可能であるが、入札者の提示する技術等によって、調達価格の差異に比して、事業の成果に相当程度の差異が生じることが期待できる場合は、総合評価落札方式を選定します。 

 

本方式のメリットは、企業規模に関係なく落札のチャンスがあることです。

総合評価落札方式では技術力や提案力の高い提案が評価されるため、資金面で体力のある大企業と価格競争をする必要がなく、特に独自技術を持つ中小企業にとって魅力的な入札方式といえます。

加えて、評価項目に環境社会配慮があるので工期短縮、環境負荷の小さい工法が評価対象となり地域住民への影響も最小化できるメリットがあります。

一方でデメリットは、工事の質や内容などの点数化しにくいものを一律に点数化して評価するため公平性の担保が難しいことです。

提出書類が多いことからも受発注者ともに資料準備や評価に時間を要します。 

 

補足ですが、総合評価落札方式で評価されるポイントのひとつに、NETIS(New Technology Information System:新技術情報提供システム)の活用があります。

NETISとは国土交通省が運用しているデータベースシステムのことで、公共工事に活用できるさまざまな新技術についての情報をインターネット上で閲覧できます。

NETISに登録された新技術を提案して有用と認められた場合、その事業者は加点の対象となります。 

 

新技術情報提供システム

 

 

具体的な工事への適用事例 

コンサルタント業務における入札(調達)形式と業者選定方式別の違いと特徴をそれぞれ理解できたと思います。

ここで改めて、具体的な工事事例(道路事業)をもとに、どの発注方式が適用されやすいか説明します。 

 

  • 知識・応用力が求められるものは「企画競争(プロポーザル方式)」であり、具体的には、道路網整備計画事業、交通需要予測検討、交差点改良事業などで適用されます。 
  • 知識・応用力が求められないものは「価格競争方式(最低価格方式)」であり、具体的には、構造物の予備設計・照査設計、防災対策設計、交差点設計などで適用されます。 
  • その間に位置する業務は「総合評価落札方式」であり、具体的には、環境調査、交通量観測・集計、各種資料作成業務などで適用されます。 

 

参考:国土交通省 四国地方整備局  令和5年度のプロポーザル方式及び総合評価落札方式について 

 

プロポーザル入札

 

 

まとめ 

業務内容に応じた入札手続きの流れを理解できたでしょうか?

昨今の入札では一般的になっている「総合評価落札方式」の導入の背景や経緯、各方式の特徴を理解することで業務への理解度も増し、受発注者の両方の立場でも役に立つことになるでしょう。 

 

 

 

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