新建設コンサルタント株式会社

Construction column

建設コラム

建設業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状 

 

建設業におけるDXの現状、課題、解決策について、国土交通省の取り組みを踏まえながら解説します。

建設業のDXにおけるトレンドの理解、建設業で求められていることを認識できるような内容となっています。 

 

デジタルトランスフォーメーション(DX)

 

 

建設業の現状とDX推進に向けた課題 

国土交通省では、インフラのデジタル化を推進する一つの手段として令和5年度より小規模なものを除く全ての公共工事について、BIM/CIMの活用を促しています。

具体的には、発注担当者の責務・役割として事業の実施に当たり、BIM/CIMを活用することによってどのような課題を解決するか、またはどのような業務の効率化を図るか等、BIM/CIMの活用目的を明確にすることが求められています。 

 

一方で、昨今の建設現場では、少子高齢化と労働者の高齢化により労働力の不足が問題となっています。

激甚化する災害に対する防災対策や、老朽化するインフラの維持管理、更新が今後必要となっていく中で生産性の向上を図ることが重要です。 

 

今後10年間で労働力の大幅減少が避けられない建設業においては、今、生産性を向上させなければ、建設現場を維持し社会的使命を果たしていくことが困難な状況になると考えられます。

我が国における建設業の生産性向上の手段の一つであるDXの推進を図る上での課題に以下のようなものがあります。 

 

DX

 

 

BIM/CIMの普及の遅れ 

働き方改革による生産性向上や建設現場のIT化にはBIM/CIMを用いた設計が有効ですが、現状では普及しているとは言えません。

BIM/CIMは建設だけでなく、その後の維持管理にも活用することができるため、生産性向上のためにBIM/CIMを広く普及させることが今後の課題です。

そこで、建設業、建設コンサルタント業におけるDX(ICT、IoT、AI技術)の活用方策をBIM/CIMを活用した設計を例に示します。 

 

① 測量結果のBIM/CIMへの反映

測量に際し、3Dスキャナーを使用した点群データでの収集を行い、その点群データをBIM/CIMに取り込むことで、これまでの測量では困難であった立体的な測量をより簡単に実施することが可能となる。

② 3次元モデルを活用した納まり検討 

複雑な配筋の納まり検討など、従来の2次元の図面では検討が困難であった部分の検討が3次元モデルを活用することで可能となる。 

③ 構造解析モデルとBIM/CIMモデルの連携 

構造解析で使用したモデルデータをBIM/CIMモデルと連携させることで図面作成の効率化を図ることが可能となる。また、構造解析モデルと設計図の不整合を減少させることも可能となる。 

 

構造解析モデル

 

④ 施工管理への活用 

BIM/CIMモデルでは構造物の完成形を作成するだけでなく、各施工ステップでのモデルを作成することも可能である。設計で使用したBIM/CIMモデルを施工時に活用することで施工方法の詳細検討が可能となる。 

 ⑤ 維持管理への活用 

BIM/CIMモデルに建設時の様々な情報を持たせることで維持管理に活用することが可能となる。例えば構造物完成時のコンクリートのひび割れ状況を記録し、点検時にそのデータを活用することでより詳細な劣化状況の確認を行うことが可能となる。 

⑥ RPAによる自動化 

BIM/CIMモデルは様々な情報を保有することから、従来手作業で行っていた数量算出を「RPA」により自動化するなど、省力化を図ることが可能となる。 

 

BIM/CIM

 

 

i-Constructionとは? 

そもそも建設業界は、一品受注生産、現地屋外生産に加えて、作業のほとんどを人の手に頼る労働集約型の特徴があります。

そこで、国土交通省では全ての建設生産プロセスでICT等を活用するi-Constructionを推進し、建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させることを目指しています。 

 

i-Constructionが目指すものは、DXを推進させて、建設機械と設計データなどモノとモノとが繋がるシステムの構築です。

その結果、3次元データを活用した調査・測量、3次元モデルを活用した設計・施工・検査・維持管理などでBIM/CIMの効果が最大限に発揮され、建設生産システム全体を見通した施工計画、管理などコンカレントエンジニアリング、フロントローディングの考え方を実践していくことが可能になり、建設産業の生産性向上に寄与します。 

 

フロントローディングの実践 

我が国におけるBIM/CIMの適用により期待される効果の一つに、フロントローディングの実践があります。

フロントローディングの考え方を実践することで、調査段階において、測量や地質調査結果や周辺状況の情報が可視化されます。

設計段階では、干渉チェックによる不具合の防止としてコンクリート構造物の鉄筋干渉を避け、仮設方法の妥当性検証や施工手順を3次元モデルで確認できるため、施工段階での手戻り防止に寄与します。

更に、構造物の維持管理性を考慮した配置を設計段階から考えることができるため構造物の長寿命化にも効果が期待できます。 

 

フロントローディングの実践

 

 

プロセス改革の実践 

また、コンカレントエンジニアリングの考え方である複数の工程を同時並行で進めるプロセス改革を実践し、設計・施工・維持管理などの各部門間で情報共有や共同作業を行うことで、手戻りを防止し、全体工期の短縮やコスト削減を図る効果が期待できます。

具体的には、EIC方式など設計段階で施工担当の知見を反映させ品質向上、景観や使用性を向上させます。

更に、類似構造物の維持管理・点検データから補修履歴を把握し、設計・施工段階で維持管理性を考えた配置や通路を確保することにも繋がることができます。

このように事業に関わる関係者と共同で作業を行うことで事業全体の効果を最大限に発揮することができるのです。 

 

 

BIM/CIMの適用にむけて克服すべき課題 

次に、我が国におけるBIM/CIMの適用に向けた課題を以下の2点から解説します。 

  • DXの推進と現場作業の省力化・省人化 
  • データ連携を活用した点検・診断の効率化 

 

DXの推進と現場作業の省力化・省人化 

建設現場の作業の多くは、人の手に頼る労働集約型で形成されています。

加えて、一般的には屋外作業のため、作業工程や施工品質が天候の影響に大きく左右され、工期遅延や施工品質の低下のリスクがあります。

そこで、DXの利活用促進、個別設計以外にも工事全体でデータ連携することで労働集約型から資本集約型へと転換して現場作業を省力化・省人化に加えて、生産性向上を図ることが課題です。 

 

データ連携を活用した点検・診断の効率化 

高度経済成長期に建設された多くのインフラ設備が建設後50年以上経過し、加速度的に老朽化していく割合が増えています。

特に、鋼製橋梁の伸縮装置裏側の狭隘部や、検査路がなく仮足場や車線規制が必要な急斜面部等では、従来の目視点検・診断が困難です。

そこで、ドローン等のICT機器を活用した点検の省力化に加え、共通プラットフォームを介したデータの記録・蓄積を行います。

そして、最新情報を踏まえた補修計画を可能とし精度向上を図ることが課題です。 

 

データ連携

 

 

DXの推進 

上記を踏まえて、BIM/CIMの適用にむけてのあり方を以下に示します。 

 

建設現場の生産性向上のためにICT施工を推進します。

具体的には、調査・測量段階においてUAVによる3次元測量を実施します。

設計段階ではBIM/CIMによる3次元モデルを活用した設計、施工段階ではICT建機を活用し、丁張の省略、熟練技術への依存度の低減を図り、成果品を電子納品により対応します。

更に、維持管理においても3次元モデルを活用して効率的な維持管理を行います。 

 

このように、建設プロセス全体でデータ連携を実施し、生産の効率化・高度化を図ることが可能になります。

本取り組みは、i-Construction のうち、3 次元モデルの建設生産プロセスでの流通を指し、ミスや手戻りの大幅な減少、単純作業の軽減、工程短縮等の施工現場の安全性向上、事業効率及び経済効果にも寄与します。 

 

データ連携の推進 

既存の点検要領に準拠して点検部位ごとにBIM/CIMを活用した3次元モデルを分割することで損傷位置や履歴を見やすくでき、現場溶接個所を重点的に点検する等の効率化を図ります。

更に、3次元モデルに配管・配線等の属性情報を持たせることで補修時の切り回しが容易になります。

加えて、データを連携させて保管することで、変位発生時や災害被災時における原因究明や復旧対策の効率化にも寄与できます。

 

河川横断橋梁や、トンネル区間において、高精細度カメラ及び打音装置搭載ドローンを活用して、アクセス性の向上と目視・触診点検の代替を行います。

更に、画像・打音データは、AIによる損傷区分自動判別によるスクリーニングでデータ整理の半自動化して維持管理業務を省力化します。

その結果、点検・診断業務の高精度化にも寄与できます。 

 

更にAIを用いた画像解析やロボットによる現場作業を省人化が可能です。

具体的には、これまで現場で熟練の専門技術者が目視確認していた点検業務をパソコン上の画像解析に転換することで現場に赴く必要が無く、AIによるコンクリートの有害ひび割れの検知精度の向上、成果品の電子納品による業務効率化を図ることが可能になります。

このように建設プロセスを全てデータ連携することでBIM/CIMの効果を最大限に発揮できるのです。 

 

 

まとめ 

建設業におけるDX化の流れを理解できたでしょうか?

国土交通省をはじめ、多くの建設業関係者がDX推進による業務の省力化・省人化に取り組んでいます。

上記背景や取り組みの流れを踏まえて自分ができることを考える一助になれば幸いです。 

 

 

 

コメントする