建設コンサルタンツ協会CPDとは?徹底解説
建設コンサルタントは、知的産業として、技術の信頼性を高めて社会資本の安全性と効率性を十分に確保する努力を続ける社会的責務を負っています。
従って、建設コンサルタント技術者は、各自の技術力向上のため、最新の技術や社会情勢の変化を継続的に学習することが望まれています。
特に、昨今の多様化した社会において、新しい課題に的確に答えていくためには、専門とする技術領域はもとより、幅広い領域で奥行きの深い技術を習得していくことが肝要なのです。
本記事では、CPD制度と建設コンサルタンツ協会の関わりについて解説します。
CPD制度とは
まず冒頭にCPD制度とは何なのかを解説します。
CPDとはContinuing Professional Developmentの略称であり、日本語では「継続教育」を指します。
建設業に関わる技術者は、自らの技術力の向上を図り常に最新・最高の技術サービスを提供する使命を有しています。
高度な土木技術サービスと総合的な技術監理の視点を要求される建設コンサルタント技術者が、各種資格を有しつつ継続的な自己研鑽や実績の蓄積を、客観的に国土交通省や民間の発注機関や国民に示すことは、公共事業を請け負う責任として重要です。
また、技術や経済の国際交流の進展下、技術者資格の相互認証も必要なことです。
国際競争が激化する現代において、日本の外に目を向けると、欧米諸国では、早い段階から技術者の継続教育の重要性を理解・認識し、技術者個人が能力を伸ばせるような制度として実績を登録・蓄積する方式を活用しています。
つまりCPD制度とは、建設コンサルタント技術者が自己研鑽と実績を蓄積する場として活用できる制度・プラットフォームなのです。
建設コンサルタンツ協会の関わり方
国内で建設コンサルタント技術者のCPD制度を取りまとめている機関に建設コンサルタンツ協会があります。
建設コンサルタント協会は、建設コンサルタントのProfessional Identityの確立を目指して、会員各社の専門的な知識・経験を有する人材を各委員会に配し、組織の運営を行います。
建設コンサルタント業界の、
- 魅力のある(Attractive)
- 技術を競う(Technologically Spirited)
- 独立した(Independent)
産業を目指して活動している組織です。
一般社団法人建設コンサルタンツ協会では、広く会員会社のみならず建設コンサルタント技術者の方々のCPDを支援するため、平成17年4月にCPD 制度を創設・運用を開始して、教育及びシステムの共有化を図るとともに、技術者が個々の継続的な自己研鑽活動をサポートする組織として役割を担っています。
本協会では、社会資本整備に携わる建設コンサルタント技術者が講習会・講演会・現場見学会等への参加、論文等の発表、企業内研修等を通じて、継続的に自己の知識の幅を広げ総合的な技術の水準を高める場を提供しています。
協会のCPD会員として登録された技術者がCPD記録の登録、確認、登録証明書の発行をweb上で行えるサービスも提供しています。
技術者資格と継続教育について
建設コンサルタント業務において、管理技術者及び照査技術者の評価対象者を定めて業務の適切な執行管理と業務成果の照査を行う必要があります。
国土交通省をはじめ、大半の地方公共団体の発注者(民間発注も含む)は、この管理技術者及び照査技技術者等の評価対象者に対し、技術士またはRCCM等の技術資格を要件としており、建設コンサルタント業務を実施するためには、責任ある技術者は技術者資格が必要不可欠となっています。
ここでは、管理技術者及び照査技技術者等の評価対象者となる要件である主な資格、技術士とRCCMについて解説すると共に、建設コンサルタンツ協会が取り組んでいる技術者の継続教育(CPD)制度について説明します。
技術士
「技術士」とは、日本の資格の中でも最高峰の資格の一つで、高度な専門的応用能力をもつ技術者に与えられる資格です。
技術士は、科学技術に関する計画、研究、設計、分析、試験、評価とそれらを指導できることを国に認められた専門家と言えます。
技術士とは、技術士法に基づいて行われる国家資格(技術士第二次試験)に合格し、登録した人にだけ与えられる国家資格であり、技術士制度とは、「科学技術に関する技術的専門知識と高等の専門的応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため、高い技術者倫理を備えた、優れた技術者の育成」を図るための国による資格認定制度(技術士法に基づく制度)です。
技術士試験は、技術士第一次試験、技術士第二次試験に分けて、文部科学省令で定める技術部門ごとに実施されており、技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)が評価されます。
技術士に求められる資質能力とは、専門的学識・問題解決・マネジメント・評価・コミュニケーション・リーダーシップ・技術者倫理の各々の項目において最低限備えるべき資質能力が定められています。
RCCM
RCCMは、「技術士」と並び建設コンサルタント業務において、管理技術者及び照査技術者の資格要件となる重要な資格であり、特に社会資本の点検・診断業務において既に活用が開始されていて、その有効性が一段と高まっている資格です。
RCCMとは、平成3年に建設省(現、国土交通省)の重点施策の一つとして、高度で良質な社会資本を整備することを目的に、技術水準の確保、責任技術者の確保の観点から、同業務に関わる管理技術者や照査技術者の育成と技術力を客観的に評価する資格の創設された資格であり、RCCM(シビルコンサルティングマネージャー:Registered Civil Engineering Consulting Manager)の略称です。
RCCMに要求される能力は、設計業務の特質を理解し、円滑、適正に業務を進めるための技術監理能力と当該分野の技術力です。
これらのことから、RCCMの資格保有者は、継続的に自己研鑽に励み、自らの能力を維持向上させる責務があることからCPD(継続教育)制度を活用して所定のCPD単位の取得が義務づけられています。
RCCMは、上述の通り民間資格ではありますが、建設業界での技術資格認定であり、国土交通省でも重視されている専門技術に携われる知識と経験のある技術者であることを証明する資格です。
更に、国土交通省が発注する業務のほとんどの共通仕様書では、管理技術者と照査技術者について「技術士、国土交通省登録技術者資格、RCCM又はこれと同等の能力と経験を有する技術者」とされているほか、建設コンサルタント発注方式の主流となっているプロポーザル方式、総合評価落札方式において、RCCMは技術士に並び、管理技術者の資格要件になっています。
ここでプロポーザル方式とは、不特定多数の企業の中から定められたテーマの企画書・提案書などの提出を求め、最も適した提案をした企業を契約の相手とする方式であり、総合評価落札方式とは、提案など総合的な能力で会社を絞り込み、最後に価格で決められる方式です。
CPDプログラム
建設コンサルタンツ協会で提供されるCPDプログラムのテーマは、教育対象者の多様性を考慮して、なるべく特定分野に偏ることがないように提供するよう留意しています。
また、協会の本部または支部が主催するもののほか、共催、協賛、後援するものも併せ、内容を審査して認定しており、下記の4 原則(1から4のいずれか)に該当する内容を満足するものとしています。
- 最新技術動向の理解に役立つ内容【技術動向】
- 建設コンサルタントを取り巻く状況の理解に役立つ内容【社会性】
- 建設コンサルタントが携わる関連分野の理解に役立つ内容【総合性】
- 建設コンサルタントとしての倫理観の育成に役立つ内容【技術者倫理】
CPD制度の今後の動向
国土交通省では、総合評価落札方式の発注工事において技術者の評価項目にCPD単位の取得状況が盛り込まれており、地方公共団体においても採用されるケースが出ていることを上述しました。
本協会でも、これまでもCPD取得機会を提供してきており、当協会へのCPD申請件数は年々増加傾向にあります。
令和3年度(2021年度)は、コロナ禍で集合研修はライブ配信形式で実施しましたが、CPD認定プログラム数はそれ以前の水準までは戻らず、CPD取得が困難な事態が継続していました。
そのため、当協会では、集合研修開催中止を検討している委員会やライブ配信を実施する委員会へ、セミナー動画Web配信の推進を働きかけました。
さらに、これまで協会会員専用ホームページでセミナー動画を配信するにとどまっていましたが、CPD取得の機会を広げていくため、令和3年(2021年)より、新たに「JCCA Web 講習システム」として運営を開始しました。
委員会向けには新システムでの動画配信の手順書の提供や支援を行い、セミナー動画をより多く配信することにより、CPD取得機会の創出に寄与してきました。
結果として、集合研修のライブ配信や、セミナー動画のWeb 配信の推進等によりCPD申請件数は、令和元年度(2019年度)以前よりも増加傾向にあります。
まとめ
建設コンサルタンツ協会とCPD制度に関して深く理解できたでしょうか。
建設コンサルタントは、各自の技術力向上、最新の技術や社会情勢の変化を継続的に学習することが望まれています。
発注者・受注者(建設コンサルタント)として建設業に関わる場合のいずれにしても技術士やRCCMなどの資格要件やCPD制度と関わる必要があるため、本制度をよく理解し、自己研鑽にはげむことが重要になります。